キッティングのクラウド化、やるべき理由と注意点は?

パソコンの置いてあるデスク ソニーミュージックの社員が利用するPCのコーディネートを担当しているじゃっくです。よろしくお願いします。

今回はソニーミュージックの従業者社員が利用するWindows PCについて触れたいと思います。昨今、アプリケーションのクラウド化という話はよく耳にしますが、PCのクラウド化はあまり聞いたことがありませんよね? 実はPCもクラウドによって変化が起こっています。今回はWindows PCのセットアップに関して、世の中の動向とそれに対する向き合い方について取り上げたいと思います。

従来のPCキッティングとAutopilot

まず「キッティング」について触れておきます。キッティングとは、PCのセットアップや業務に必要なソフトウェアのインストール、ネットワークの設定などを事前に行うことを指します。キッティングを行うことで、

  • PCを受け取ったユーザーはすぐに業務を始められる
  • 各企業で定めたセキュリティ施策やコンプライアンスに準拠した環境を提供できる
  • 同じ設定のPCを提供することでユーザーサポートがしやすい

といったメリットが得られます。

Windows 10登場後、PPKG(プロビジョニングパッケージ)と呼ばれる定義ファイルを利用してローカル環境で実行可能な「プロビジョニング」やインターネット経由でPC管理者の手を介さずにユーザー自信で実行できる「Autopilot」と呼ばれる新しいキッティング手法が登場しましたが、それ以前はOSのマスターイメージを利用して他のデバイスにコピーするクローニングという手法が長らく用いられてきました。現在もクローニングを利用している企業は多いかと思います。こうした従来のキッティング手法は、PCをシステム部門でストックし、一括でキッティングを行ったうえで、準備ができたものをユーザーに出荷するという考え方を前提にしています。

一方、今回取り上げるAutopilotはユーザーがPCをインターネットに接続し、アカウントを入力することで自動的にキッティングされる仕組みです。ユーザーの手元でキッティングされる点が従来のシステム部門で行うキッティングの前提と大きく異なっています。 うまく活用すれば新品未開封のPCをそのままユーザーに渡すことも可能になります。システム部門でPCを開梱する必要もなくなりますし(大量のPCの開梱って結構重労働なんですよね……)、新品未開封のPCが届いた方がうれしいユーザーも少なからずいると思います。

OSライフサイクルに対応できるか?

そもそも何故キッティング方法を変えるのか?という話ですが、従来のクローニングをやめて、Autopilotに移行するべき理由の一つにOSライフサイクルの変化があります。

2015年のWindows 10登場とともに、OSのライフサイクルは大きく変化しています。具体的には、半年毎にアップデートが行われ、18か月でサポートが終了するようになりました。日々アップデートされるスマホアプリなどをイメージすると、半年毎のアップデートなんて大した話ではないように聞こえますが、企業で長らく利用されてきたWindows XPやWindows 7が延長サポート込みで約10年間利用できたことを考えるとこれは大きな変化です。

本来、このライフサイクルの変化にあわせてPCキッティングも短いスパンでの更新に対応できる方法に見直すべきだったと思いますが、いまだに多くの企業が昔ながらのクローニングを利用しているのが実態です。

OSアップデートの度にマスターイメージの更新が必要になるクローニングは、今のOSライフサイクルには不向きであり、これに対応するにはプロビジョニングやAutopilotのような、マスターイメージを利用しないキッティング方法に切り替える必要性があると考えています。

キッティング担当はリモートワークができない?

リモートワークの普及もキッティング方法を変えるべき理由の一つです。

昨今はリモートワークやハイブリッドワークを導入する企業が多くなりましたが、キッティング担当はリモートワークができないというのはよく聞く話です。システム部門にて一括で行うキッティング手法はPCの保管場所や作業場所が必要なため、どうしてもオフィスでの作業が必要になってしまうのです。

クラウドキッティングであるAutopilotはPCをインターネットに接続し、ユーザーがアカウントを入力するだけでキッティングが始まります。調達したPCをユーザーに直接送るだけでキッティング業務を代替することも可能で、キッティング作業のほか、保管場所や作業場所も不要になります。これが実現できれば、キッティング担当者も晴れてリモートワークができるようになりますね。

移植ではなく、一から作る!

キッティング担当からすると、マスターイメージからも解放され、キッティング作業も場所を選ばなくなり、メリットしか無いようなAutopilotですが、導入にあたり課題になる部分や気をつけたい点も多々あります。

Autopilotによる大きな変化の一つがネットワークです。従来のキッティングは、社内ネットワークが利用できる環境で作業することが多く、それゆえ、社内ネットワークを前提とした作業やツールがキッティングに含まれていることが少なくありません。多くの企業で導入されているActive Directoryなどが良い例です(Active Directoryがなんぞや? という話は今回のテーマから逸れるため割愛します)。

Autopilotはインターネットに接続すればどこでも自動でキッティングできることがコンセプトであり、メリットでもあります。クローニングからAutopilotに切り替える際に陥りがちなのが、今までのキッティングで実施してきたことを全て取り込もうとして、結果的にAutopilotのメリットを潰すことになったり、歪な使い方になったりすることです。

前述のActive Directoryを例にとると、せっかくAutopilotで自宅からインターネット越しにキッティングできたとしても、Active Directoryに参加させたがために、出社するまでPCにログインできない……なんてことが起こり得ます。本当にActive Directoryへの参加は必要か? を改めて検討したうえでAutopilotを組み立てていくことが重要になると思います。

基本的には「移植」と考えずに一から始めるくらいのスタンスで臨んだほうがいいと個人的には思っています。

おわりに

OSライフサイクルや昨今の働き方を考えるとAutopilotの導入は大変魅力的です。

しかし、今までやってきたことにこだわり過ぎると折角導入しても残念な結果になりかねないため、キッティングの断捨離をしつつ導入するのをおすすめします!

Windows 11への移行を控えている企業も多いと思いますのでキッティングを見直すチャンスだと捉え、今時のキッティングにチャレンジするのもいいかも知れませんね。

それでは、また次の記事でお会いしましょう!